2008年4月10日木曜日

石油枯渇2:ピラミッドは砂に沈んだ

-

 石油枯渇2:ピラミッドは砂に沈んだ
━━━━━━━━━━━━━━━━

 大昔のこと。
 エジプトはナイルの恵みを受け、緑豊かな土地であった。
 そこに出現したのがピラミッド。
 ピラミッドが何なのかは、いまだになぞ。
 墳墓説が一般的であったが、今ではほぼ否定されている。
 天文台、この説が有力。

 なんのための天文台。
 「ファラオ」が悠久の宇宙に飛び立つその日を観測するための天文台。
 目的の日、ピラミッドを走っている唯一の狭い長いトンネルの先に、ある星が姿を現す。
 そのとき、ファラオはその星に向かって旅立つという。
 旅立ちの日を確定するのが、このピラミッドの使命という。

 ピラミッドを造るために、豊かな緑は伐採され、積み上げるレンガを作るために燃やされたという。
 木は当時の唯一のエネルギー源。
 それが軒並みピラミッドの築造に当てられた。
 そして、エジプトは禿げ野原になる。
 緑を、エネルギーを失ったエジプトは、自然に対抗する策を失い、砂漠の中に飲み込まれていく。

 エネルギーを失ったものの一つの姿が、エジプト文明であり、それを引き起こしたのが砂に埋もれてしまったピラミッドである。
 「人類が生存できる環境下で、燃料が枯渇する事は無い」と「教えてgoo」は言う。

 燃料が枯渇したとき、ピラミッドは砂に沈み、エジプト文明は滅亡し、悠久の砂漠と化した。

 「ドキドキ」してきます。
 食糧と人口は悲観論、石油は無尽蔵。
 いったいどうなるのだろう。
 こういう相反したデータを検索していくのが「電子網さんぽ」の歓び。
 未来のこととて「アタリー」といった数学的解答があるわけではないのですが、調べるだけでも面白い。
 そしてもう一つ、これまで知らなかったおのれの好みが見えてくる。


 「石油枯渇」で検索し、その「20万件のトップ」に出てきたのが、下のサイト。
 一読してみてください。
 「エコノミスト」からの翻訳。
 長いので一部を抜粋して、「訳者のまとめ」の部分をコピーします。

★ 原油は枯渇しませんったら。
http://cruel.org/other/oil/lotofoil.html

底なしのビールジョッキ------世界の原油が枯渇しそうにない理由
(The Economist Vol 375, No. 8424 (2005/04/30), "A Survey for Oil" 所収の "The Bottomless Beermug," pp. 13-15)

 「アメリカ地質研究所」は、2000年に包括的な調査を行い、そんなピークははやくても20年は先だと結論づけた。
 OECDの「IEA(国際エネルギー機関)」も大まかにどういしていて、必要な投資さえ行われれば、原油供給は2030年以降まで制約されることはないと論じている。
 だが、真っ向からこれに反対するアナリストもいる。

 石油悲観論者たちの希望の星は、「コリン・キャンベル」と「ジャン・ラヘレール」だ。
 引用されることの多い1998年の「サイエンティフィック・アメリカン」論文で、かれらは世界的なハバードのピークは、ちょうど今頃(2005年頃)だと予想していた。
 『ガソリン切れ』だの『石油の終わり』だのと題名の陰気な本も山ほど出ている。
 そして石油悲観論者の投資銀行家であるマシュー・シモンズ氏は、五月にサウジアラビアの原油生産の維持可能性を疑問視する本を刊行予定だ。

 石油会社が一世紀以上にわたって(南極以外の)全世界をつつきまわしてきたことを考えれば、サウジアラビアのガワールのような日産500万バレルの「超巨大」油田はあり得ない、と悲観論は続ける。

 ロッテルダムのエラスムス大学の「ピーター・オデル」は、
 「1971 年以来、確認埋蔵量は 1.5 兆バレルも増えています。
 同じ 35 年間で消費された原油量は、0.8 兆バレルにすぎません。
 ですから世界の原油は枯渇しているどころか、あふれているとさえ言えるわけです」
と述べる。

 なぜ推計埋蔵量が増えるかと言えば、それは絶え間ない経済と技術革新の組み合わせだ。
 IEAはこのプロセスを以下のように説明する:
 「埋蔵量は絶えず、新発見や価格変動、技術進歩にあわせて改訂されます。
こうした改訂はすべて埋蔵量を増やす方向に動きます」

 数十年前には、油田からの平均回収率は「20 パーセント」だった。
 めざましい技術進歩のおかげで、これが今日では「35 パーセント」に上がっている。
 だがこの改善にもかかわらず、油田にあることがわかっている原油の三分の二は、不経済だとして放棄されている。

 将来の発見や技術革新があれば、世界的なハバードのピークは魔法のようにさらに先に押しやられるだろう。
 評論家たちは、イギリスの北海油田は「1990 年」までには生産のピークを迎えると予想した。
 実際には、ピークを迎えたのはやっと最近になってのことだった。

<略>

訳者コメント:
 気が向いたんで訳しました。
 どうせ冒頭にあがってるシモンズの本は絶対どっかに翻訳されたり、またぞろだれかが受け売りで騒ぎはじめたりするから。
 一部の馬鹿な環境論者は、最近の原油高が石油資源枯渇の証拠だなんて無知蒙昧なことをわめきたてるし。
 また例のロンボルグ『環境危機をあおってはいけない』が出たとき、環境保護論者は、世界のエネルギーが枯渇しかけているという信念(中略)を実際に抱いている環境保護論者は、ほとんど(まったくではないにせよ)いないとのたまっていたくせに、ちょっと状況がかわると「実は京都議定書は石油枯渇対策だ」なんていうことを言い出す人が出てくる。どこにそんな証拠があるんだ! 
 言っていることはロンボルグ本と同じなのですが、特に「キャンベル論文」は発表当時(1998)えらくもてはやされて、「石油埋蔵量予測の決定版」と言われていまだに信じている人が結構いるので、それをはっきり批判してある文章をネットにあげとくのも重要でしょう。

 ここでの論点はつまるところ:

●]. 技術がどんどん発展してきて、これまで地下から取り出せなかった原油がどんどん取り出せるようになってくるので、新しい油田が見つからなくても使える油田はどんどん増える。

●]. 新しい油田も見つかる可能性はたくさんある。
まだ探していないところはいくらでもあるし、技術革新でこれまでは手が出なかったところも手が出る。

●]. また発見技術や利用技術も向上して、昔の(映画「ジャイアンツ」みたいな)闇雲に掘って大当たりをねらう状況とはまったくちがう。

●]. 問題があるとすれば、技術開発への投資が一時的に鈍っていたことだが、新しいプレーヤーが出てきてこれも先の見通しは絶望的とはいえない。

 ちなみにここで訳出したような議論に対して必ず出てくるのは「そんな技術が今後開発される保証はない」という話だけれど、将来予想をあらゆる技術が現状で止まるという想定で行うべきだというのはあまりに極端。



 これに対して悲観論が下記のサイト。

★ 「石油枯渇時代」がはじまった
http://www.ihope.jp/petroleum.htm

 季刊『理戦』81号(実践社 http://www.jissensha.co.jp/)では、『石油枯渇時代がはじまった』という特集を組み、迫り来る資源・エネルギー問題を大きく取り上げています。

 寄稿している人たちは多種多様ですが、それぞれの第一線で環境問題に取り組んでいる人たちです。
○「高く乏しい石油時代が来る」(東京大学名誉教授 石井吉徳)
○「環境政策で世界をリードするEU」(京都大学大学院地球環境学堂教授 松下和夫)
○「廃棄物が減っては困るリサイクル事業」(京都大学大学院経済学研究科教授 植田和弘)
○「車を愛していてない人に車の将来を託せない」(モータージャーナリスト 清水和夫)
○「スポーツカーばかりを悪者にしないで」(カー雑誌『ENGINE』編集長 鈴木正文)
○「高度経済成長を続ける中国の環境問題」(日本経済団体連合会・アジアグループ副長 青山周)
○「世界で繰り広げられる石油争奪戦」(長崎大学環境科学部助教授 戸田清)
○「日本の国土は何人養えるのか?」(農業・生物系特定産業技術研究機構研究員 篠原信)
○「太陽電池の技術開発に夢を託す」(名古屋工業大学電気電子工学科教授 市村正也)
○「メタンハイドレートを代替エネルギーに」(日本オイルエンジニアリング株式会社開発技術部 河田裕子)
 とりわけ、冒頭の石井吉徳氏は、元国立環境研究所所長で人類が直面する資源・エネルギー問題の本質を鋭く指摘しています。

 石井氏の主張のポイントは、以下のようにまとめられます。

①.石油生産のピークは既に過ぎており、新しい巨大油田が見つかることもあり得ない。

②.巨大な油田は中東にしか存在しないが、その中東の油田はすでに老齢化している。
  既に世界最大のガワ-ル油田(サウジアラビア)は、圧力が低下して自噴せず、毎日700万バーレルの海水を注入している。

③.人類は既に可採埋蔵量の半分の石油を使ったが、後半分残っているわけではない。
  エネルギー資源を評価するには、「EPR(Energy Profit Ratio)」が不可欠。

注:「EPR=出力エネルギー/入力エネルギー」で、中東の巨大油田は当初「EPR=60」という極めて高い値であったがゆえに、最も有効なエネルギー足りえた。
(簡単にいうと1万円分のエネルギー(経費)をつぎ込むと60万円分のエネルギー(すなわち石油が取得できるということ)

④.石油を超える「EPR」を持つエネルギー源は存在しない。
  原子力発電も極めて低いし、多くの代替エネルギーもそうだ。
  また、同じ油田でも、採掘に伴って「EPR」は低下していく。

⑤.したがって、問題の核心は「地球、自然は有限である」という自覚のもとに、「限界に生きる知恵」が必要だということ。

 石井氏は、自らのホームページでも具体的データを示して解説しています。
☆ http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/



 「さあ、どっちでしょう。」

 「教えて、goo」の回答の中に『石油に限って言えば、一般的に埋蔵量と言われるのは「可採埋蔵量」であり、その時点の経済性から採取できる数量を指します。』とあります。
 埋蔵量とは通常「確認可採埋蔵量」をさします。

 分からないのは「その時点の経済性から採取できる数量」という「その時点の経済性」なるものをどうやって捕捉しているかということです。
 今と同じ延長上に未来があるなら問題はない。
 ふるきよき時代の経済学のセオリーで十分間に合う。
 一般にはそのようなことは考えられない。経済は生きている。
 生きているから食糧や人口の専門家連中が、未来を不確定にして、曖昧な表現をせざるを得なくなっているのではないかと思うのです。

 でも、不確定にばかりしていては前に進まない。
 そこで出来るだけ数量化して、いくつかのモデルを作って検討していくのが、現代の学問の取り組み方法。

 食糧や人口の連中は種々のモデルを作って、その中からある範囲の中で見込まれそうなものを「こうなるんじゃないだろうか」と「自信なさそうに選んでくる」。

 石油の専門家たちは、バックグラウンドになるモデルが描けていないのに「その時点の経済性から採取できる数量」を満々の自信を持って表示する。

 「その時点で石油1m3がいくらのコストで採取でき、そのコストとはその時点での生活経費と比較してどの程度にあたり、それゆえに採取しても計算にのるのである」というところを知りたいのである。
 もちろん仮想モデルであるが、とりあえずのたたき台としての根拠にはなる。
 石油の場合、地下に「埋まっている数量」とそれを取り出す「技術」と、その「技術費用」だけで、モデルが出来上がっているように思えてならない。
 石油が枯渇しない、と同じように石炭も枯渇してはいない。
 しかし、石炭は採取されていない。それは経済のバックグランドが変化したからである。

 前に書いたが、「水不足」は家庭で水道栓をひねったときに実感する。
 水圧が抑えられちょろちょろになったり、時間制限があって出なかったりである。
 なら、石油を実感するのはいつだろか。
 マイカーにガソリンを入れるときである。

 石油はふんだんにある。
 では、安いガソリンを車に入れることができるのか、である。
 できれば、石油は十分だと実感できる。
 でも、昨日より今日のほうが「ガソリンが高い」、となれば石油は枯渇しつつ(というより、使えなくなりつつ)ある、と感じるのではないだろうか。
 年明け早々、石油は1バレル、史上最高値の100ドルの値をつけた。

 入ってくるニュースはどうもそうでもなさそうな雰囲気を濃厚に匂わせている。
 テレビニュース(2008/03/05)では10年後にはガソリンはリッター3ドル(300円)になるだろうと言っている。

 東亜日報[社説]、「銃声のない資源戦争、活路はどこに? FEBRUARY 02, 2008」

 中国が「自分で使うぶんもない」として3月まで石炭の輸出を中止したため、発電やセメント業界は窮地に追い込まれている。
 輸入石炭の20%を中国に依存しており、在庫は1ヵ月分しかなく、事態が長引けば、工場の稼動を中止せざるをえない状況だ。
 中国の石炭抽出中止は、大雪による輸送難が直接的な原因となったが、世界的なエネルギー不足を実感させられる出来事だ。

 世界は銃声のない資源確保戦争を繰り広げている。
 石油や天然ガス、ウランはもとより、鉄鉱石や石炭、ニッケルのような希少資源の確保戦にもしのぎを削っている。
 中国やインド、東ヨーロッパが工業化の列に加わり、世界の資源を吸収するブラックホールとして登場し、資源の需要は急増している。
 資源の97%を輸入に頼っている韓国にとって、金があっても資源を買えない事態になれば、それこそ深刻な事態だ。

 資金力のある国が富裕国なのではなく、資源を持つ国が大手を振るう「資源覇権の時代だ」。
 社会主義の崩壊で、「3流国家」に転落した「ロシア」は、天然ガス埋蔵量で1位、原油埋蔵量では世界6位というエネルギー資源のパワーで、世界の舞台で大国としてのプレゼンスを回復している。

 周期律表上のほとんどの化学元素を持っているといわれている「カザフスタン」のプレゼンスも一段と高まっている。

 中国は豊富なドルを利用して油田を積極的に買い付け、胡錦濤国家主席や温家宝首相はみずから産油国を歴訪し、エネルギー確保のための資源外交を展開している。
 韓国も、エネルギー外交の舞台を全世界に広めるべきだ。
 にもかかわらず、李明博(イ・ミョンバク)大統領当選者の4大特使のうち、唯一、ロシア特使がプーチン大 統領と面談できなかったことが気にかかる。対ロ外交が円滑ではないという証拠ではないか。

 韓国は世界4位の石油輸入国であるが、国内外で開発・確保した原油やガスを国内消費量で割った自主開発率はわずか4%だ。
 フランス(95%)やイタリア(51%)、スペイン(46%)、日本(15%)には遠く及ばない。
 韓国の資源開発企業の埋蔵量確保率は、世界的なエネルギー企業に比べ、足元にも及ばない水準だ。
 われわれにもメジャー級の資源開発企業が求められている。

 幸いなことに昨日、韓国石油公社や三星(サムスン)物産が、米国メキシコ湾やアフリカのコンゴで総埋蔵量9000万バレル規模の史上最大生産量の油田買収に成功したというニュースが届いている。
 非常に喜ばしい話だ。
 次期政府は各企業の海外資源開発事業への投資を外交や財政の面で積極的に支援しなければならない。



 将来への見通しとして、とりあえず技術的に何をしないといけないかを具体的にしているのが下記のニュース。

★ 25today.com by NICHIGO PRESS
http://www.25today.com/news/2008/02/post_1974.php

 ビジネス - 2008年2月27日
─────────────────
 「石炭、ガスの液化技術が豪エネルギーのカギ」:ファーガソン・エネルギー大臣が提案

 2008年2月26日、エネルギー業界コンファレンスで、連邦政府のマーティン・ファーガソン・エネルギー大臣が挨拶に立ち、オーストラリアのエネルギーの将来を握っているのは

 ①.ガス液体炭化水素化技術(GTL)
 ②.石炭液化(CTL)

の2つだと語り、過去にはそういう技術に対して懐疑的な意見が多かったが、状況が変わってきており、産業が実現し、成長していると述べた。

 「GTL」は天然ガスを価値の高い超クリーンな石油に変換する技術であり、「CTL」は石炭を分解して同じく石油に換える技術である。

 超クリーンな「GTLディーゼル油」がすでに世界市場に出回っており、プレミアムがついている。
 今後何年か、エネルギー省は我が国の将来的なエネルギー確保のために「GTL」や「CTL」の研究を進めるために作業する」。

 「我が国には「600年分」を超える石炭埋蔵量が知られており、都市部の大気汚染が問題になっているアジア太平洋地域にクリーンな自動車燃料として供給することができるようになる。
 オーストラリアで適切なクリーン・コール・テクノロジーを開発することが大切だ」と語った。

 また、今後15年間の電気、ガス、燃料の需給状況を見通すために、政府が設立を約束した「全国エネルギー確保評価委員会」は現在編成を急いでいると述べ、評価が済めば、政府は、産業の政策フレームワークを作成するため、「GTLおよびCTL」 提案者と話を煮詰めていく、と語った。

 「オーストラリアは、地下資源という強みと企業競争の優位を利用し、富をオーストラリア国民と分かち合うため、新世代の国家建設型産業とインフラストラクチャーを必要としている」と、マーティン・ファーガソン・エネルギー大臣は挨拶した。


 オイルサンドやメタンハイドレートがほとんど見通しのつかない遠未来的な資源なら、こちらは具体的な透視のきく近未来的な技術開発。


 石油はふんだんにある。
 とすれば話はやはりこうなるだろう。
 技術的に石油を「掘れる」かではなく、生活身近で「その時点の経済性」から石油を「使える」のか、という問題である。


 なを、資源状況を分かりやすく図にしたのが、下記のホームページ。

★ 石油資源の枯渇
http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data2005.html

★ 世界のエネルギー資源埋蔵量
http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data1008.html



<つづく>



【Top Page】




_