2008年8月25日月曜日

「日本沈没」1:東京壊滅


 ● 東京壊滅
[Newton 2000年10月号 ニュートンスペシャル]より


 「日本沈没」1:東京壊滅
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 図書館に小松左京の「日本沈没 上・下」がありました。
 文庫本で2006年1月1日発行、第5刷8月1日版で、まだ新しい。

 最終ページに「本書のプロフィール:本書は、1973年3月に光文社から書き下ろし出版されました」されたとある。
 出版から「35年」の歳月がたっている。
 35年とはほぼ一世代である。

 昔、読んだときは地震発生のメカニズムに最も興味があった。
 いわゆる太平洋プレートが大陸プレートにもぐり込み、その反動で地震が起きるという説である。

 それから13年後の、1986年には伊豆大島の三原山が噴火し、全島民1万人の脱島作戦が行われました。
 日本沈没が現実のものとなりつつある、と思ったほどです。
 ちなみに、この中に大島に嫁いだ小学校の同級生が一人混じっていたので、この噴火とその救出作戦については印象深く残っています。


★ 全島1万人、史上最大の脱出作戦 三原山噴火13時間のドラマ
http://www5a.biglobe.ne.jp/~t-senoo/Ningen/mihara/sub_mihara.html


 その後、富士山噴火説もあり、広島が安全だといってその時期、避難された方もいたとか。
 実際、そいう話を家のはす前の方から聞きました。
 話好きのオバサンで「富士山が噴火するよ」と。


★ 富士山噴火で首都圏壊滅
http://jp.youtube.com/watch?v=ZITLJxSzpig&feature=related

★ 富士山噴火は2030年前後東海南海地震に連動
http://jp.youtube.com/watch?v=37M1CLIohSk&feature=related

★ The history of the eruption of Mt. Fuji. 富士山の噴火史
http://jp.youtube.com/watch?v=UeO-wbTxK48&NR=1


 22年後の1995年に神戸大震災が起った。
 私はこのときすでに、こちらにいたため、断片的なニュースで知るだけでした。
 原因は「活断層」という。
 この言葉、このときはじめて聞きました。
 活断層とはなんぞや。
 地震というのは、主に関東地域で起こり、それは2枚のプレートによるせめぎあいによって生じる場合が多いと聞かされていましたので、まるで知りませんでした。

 ところが突然予想だにしなかった関西に地震が起き、それとは全く別のメカニズムで活断層のズレで生じたとあります。
 最終死者7,000人。


★ 1995年 阪神大地震 Great Hanshin earthquake, Japan
http://jp.youtube.com/watch?v=h2k3jtjaL0o&feature=related


 なんと「日本沈没」にはそのことがちゃんと書かれているのです。
 昔、読んだときには地元の関東地方のみに興味があったため、活断層なるものは読み飛ばしていたようです。


 日本沈没のシナリオによれば、伊豆天城山の噴火から始まり、三原山が煙をあげ、そしてこの活断層による関西地方に飛び火する。
 8月のある日「京都大震災」となり、死者「4,200人」と小松左京は書いています。

 ここから日本沈没が動きだす。
 このとき「197*年」の日本の人口は「1億1千万人」。

 翌年の3月、政府が「日本沈没を公式発表」する。
 首相発表の内容は、
 「調査期間の予測によりますと、この変動は、ここ「1年以内」の間に起こり、その変動の結果、日本はそのほぼ全域が海中に没し去ることになる、ということであります」。

 猛烈なスピードで、日本人口1億1千万人の脱出が開始される。
 伊豆大島の全島民避難はこの小説を思い起こさせました。
 そして、たった6ケ月で「7千万人」が日本を離れる。
 全人口の「2/3」にあたります。
 読んでいて、すごいと思った。
 そんなことが可能か、と思いました。

 それまでに2千万人が死に、残された2千万人のうち、自ら日本の国土と運命を共にした人たちも多くいたとある。
 9月が最後の山場となり、その月、日本列島は海に沈んでいく。
 エピローグは「竜の死」


 今回、読み返して最も興味あったのは、地震メカニズムではなかった。
 7千万人という脱出者についてである。
 メカから文化・民族へと興味の焦点が移っている。
 それだけ、年齢を経たということであろうか。
 それとも、日本に住んでいないということによってもたらされる視点の変化であろうか。


 おそらく、近いうちに関東地区に地震が発生し、東京は壊滅するだろう。
 そうメデイアは伝えている。


★ Newton 2000年10月号 ニュートンスペシャル
  ワーストケース  
東京壊滅 巨大地震 ...
http://www.newtonpress.co.jp/search2/sample/kiji_phtm/p2000/p200010/p200010p060.html


 防災対策、避難対策もとられているが、それを上回る規模で来た場合、あるいは想定外の事象が発生した場合、どこまで有効に働くだろうか。
 有効の限界を超えるほどなら、もはやお手上げにならざるを得ない。

 来るはずはないと思われていた関西に地震が発生したということを考えれば、自然の驚異とは人の考えを超えて動くところにある。

 Wikipediaを見てみる。


 南関東直下地震
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 南関東直下地震(みなみかんとうちょっかじしん)とは、2007年(平成19年)~2036年(平成48年)の間に、関東地方に70%の確率で発生すると想定されている直下型の大地震。
 「マグニチュード7級」と想定される。
 別称に「首都直下地震」、「東京大震災」、「東京直下地震」など。

 1600年以降、マグニチュード8級の1703年12月31日の元禄大地震と1923年9月1日の関東地震(関東大震災)が発生しており、このクラスの地震は200~300年間隔で発生するとされる。
 またその間、1855年11月11日安政江戸地震と1894年6月20日の明治東京地震が発生しているように、マグニチュード7級の地震が数回発生するとされており、「いつ発生してもおかしくない」状態である。

 関東地震や東海地震に比べ地震の「規模は小さい」ものの、日本の経済、政治の中心地ゆえ経済活動や国家の安全保障に甚大な被害を及ぼすものになると予想されている。
 1992年に「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」を制定し、さらに2003年に中央防災会議において「首都直下地震対策専門調査会」を設置し、首都特有の問題を含む対策を検討している。

 震災発生時、本社機能がマヒしないように関東地方以外に本社機能を代替する支社を設置する企業が出てきている。

  被害想定
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 2005年に発表された中央防災会議の報告によると、被害が最も大きい場合、死者13,000人、負傷者170,000人、帰宅困難者6,500,000人、全壊の建物850,000棟、避難者総数700万人、経済への被害112兆円と、今の日本にとてつもない被害を及ぼすと想定されている。
 ちなみに、東京都防災会議地震部会が2006年3月に発表した最終報告では、被害が最も大きい場合でも死者は約5,600人とされた。


 あの東京で死者「1万3千人」だという。
 とても信じられない数字である。
 誰がどう考えても、「おかしい」と思う。

 神戸大震災で7千人である。
 神戸市の人口は「150万人」である。
 東京は一千万人都市である。
 7倍としても「5万人」は想定されはずである。

 Wikipediaによれば神戸は「実際は山林や北区などに見られる裏六甲より北の農村部の方がはるかに面積は広い」とある。
 この5月におきた中国の地方部の四川地震でも「7万人」である。

 一千万都市東京から見て人口の一割としても「100万人」を記録しても不思議はない。
 関東大震災で「10万5千人」である。
 「いつ発生してもおかしくない状態である」とWikipediaはいう。
 そして、関東地震や東海地震に比べ地震の「規模は小さい」と Wikipedia はいう。

 なら、関東大震災級を超える地震がきたらどうなるのだろう。
 「来ない」とはいえないだろう。
 かくも密集してきたバベルの塔のような東京で死者「1万3千人」という数字はどうみてもありえない。
 不安を抑えるため、どうせ分からない事なのだから気休めにと、過小に見積もっているのかもしれない。

 自然は想定を超えたところで動きだす。
 まず「東京壊滅」と見ていい。
 安穏の「避難」などできないと判断して差し支えないだろう。
 自然はそんなに優しくはない。

 『死する心積もりを持たせること』

 それが究極の災害対策かもしれない。
 それには成功している。
 「地震のメカニズムはまるで分かっていません、今できることをやるだけです」という。
 どう考えてみても「それしかない」
 それ以上は?マークである。
 ということは、内輪で設定し、内輪の対策をとることしかできない、ということである。

 「東京大震災はきません。来るのは
南関東直下地震です」
 ですから、「安心です」
 「気休めのふりまき」
 よく使われる、社会心理の沈静方法。
 大きなものを、小さなものにすり換える「世論操作テクニック」
 裏を返せばこういうこと、

 『もうダメだよ、覚悟しなさい』

 怖いものは見ないように、触れないようにしているだけである。
 恐怖は心に秘めて、顔でニコニコしているしかない。
 人が人を呼び、超高層が超高層を呼ぶ。
 脆弱な基盤の上に。

 選択肢は「東京壊滅」が最も太い。


 ちなみに我が娘、東京のド真ん中に住み、江東ゼロメートル地帯に勤めている。
 24時間のどの時間で発生するかで、被害は大きく異なる。
 通勤時に当たれば地下鉄で、まず助からないだろうと思っている。


★ YouTube - 東京大震災 Major earthquake of Tokyo
http://jp.youtube.com/watch?v=hlkCyjwD4-I



 現在人口「1億2千7百万人」

 どう見ても多すぎる。
 小学校のとき先生から「日本は小さな島国で、人口密度がひじょうに高い」と教わった。
 数十年も昔の話である。

 その後、「日本列島が膨らんだ」という話は聞いていない。
 しかし、人口は急激な勢いで膨らんだ。
 ということは、更なる人口密度の上昇があった、ということになる。

 「狭い日本、そんなに急いで何処へいく」

 そんな標語があった。
 ちなみに、これは「官製標語」である。
 下に「****警察署」と刷り込まれていた。

 言わんとしていることは何か。
 「小さな日本」と「過密な人口」を、交通標語に置き換えて表現した、ということである。

 人口の高密度はスラム化を促す。
 スラム化しなければ、過密な人口を支えきれない。
 都市、特に東京に集中している。
 東京は「美しいスラム」である。
 古典用語のスラムは「汚さを象徴」する。
 現代用語のスラム、すなわち「美しいスラム」はコンビニエンス、すなわち「便利さを象徴」する。
 便利であることによって、高密度に人口を受け入れられる。
 どこへ行っても人だらけ。
 人間の重さに耐えかねて「満杯日本、日本シンドローム」の冗談が出るほど。

 そこで減るメカニズムが動きだした。
 未来的には2050年には1億人ほどになるという。
 それでも多いようで、2100年には9千万人を切るという予想が見通しの大半を占める。

 おそらく、過密な人口を適正化するために、「社会的人口調節機能」が反応し、日本に節度をもたらすよう動いているのであろう。

 「適正」という用語のもつ意味はなんだろう。
 どういう形であろうと、人口減少が実行されないと、「日本がもたない」。
 高度成長に「浮かれている時代」は過ぎ去った。
 「成長理論」で武装している限り、破綻は近づいてくる。

 現代において「成長のゴール」とは「破綻点」の言い換えのことである。

 だが、その前に自然の暴力が起きる可能性もある。
 もしかしたら、それは「日本という島」の持つ
「自然的人口調節機能」であるのかもしれない。

 「いつ発生してもおかしくない」状態であるという。
 「東京壊滅」「首都消失」なら、それはそれである。
 増えすぎれば、それまで考えもしなかった「減るメカニズム」が動くであろう。
 生物学でいえば「個体数調整」。
 通常の論理であり、自然の事である。
 とりたてて不可思議なことではない。

 後から「知らなかった」などという能書きを言うことではない。
 「なぜ、言ってくれなかったのだ」などと愚痴ってもはじまらない。
 
 とりたてて、「見知らぬメカニズム」が動くことは不思議なことではない。
 小さな要因が、大きな動きになって地表に現れることは十分にありえる。
 神戸大震災でも、これまであまり知られていなかった原因によっている。
 人間はすべてが分かっているわけではない。
 ささやかな自然の営みの表皮の一部を知るに過ぎない。

 科学とは、科学を超えるものを理解することは出来ない。
 科学とはささやかな人間の知能が作り出した、人間にとっての「知るための枠組み」である。
 自然の持つ枠組みではない。

 人間の知能は自然を超えられない。
 自然は科学、すなわち「人間の知能」の外側にある。
 自然にとって科学とは、米粒のものでしかない。
 「科学を超えるもの」など自然の中にはあたりまえにいくらでもある。

 「エイズ」が不治とされるのがその典型だろう。


★ ニュートンスペシャル
  ワーストケース 東京壊滅 巨大地震
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 日本は世界でも有数の地震多発地帯で、東京はこれまで何度も巨大地震に襲われてきた。地震 のメカニズムとともに東京を巨大地震がおそう可能性を探る。
http://www.newtonpress.co.jp/search2/sample/kiji_khtm/k2000/k200010/k200010p060.html

 PART2 火災 ワーストケース
 震度7、午後6時半発生のケースをシミュレーション

1]. 東京の最悪のケースでは3万件が火元になり、東京23区の約20%が焼失する
2]. 東京は神戸にくらべて人口では約9倍、世帯数では約7倍の規模である
3]. 冬の夕方午後6時、巨大地震発生と同時に多くの場所で火災が発生し延焼していく
4]. 神戸での事例をもとに、東京での最悪の火災をシミュレーション
5]. 大規模火災のときには、火災合流が発生する
6]. 関東大震災で避難場所だった被服廠跡で3万8000人の被害を出した火災旋風
7].ワーストケース--火災旋風が多数出現
8]. 大規模な火災では、いつでも火災旋風がおこりうる。避難場所も安全ではない
9]. これだけあるガスタンクや石油タンク
10]. これだけある化学工場や石油・石炭製品の製造工場
11]. トンネル内で事故がおきると、大規模な火災につながる可能性がある
12].震度7の激震。初期消火も消火活動も不可能
13. 火災による危険の大きい場所はどこか。東京都の「火災危険度マップ」



★ ニュートンスペシャル
  ワーストケース 東京壊滅 巨大地震
http://www.newtonpress.co.jp/search2/sample/kiji_khtm/k2000/k200010/k200010p110.html

 PART4 竹内均が語る地震の心得
 いつかくる巨大地震にそなえて、私たちは何をすべきか

1].地震の心得1
  地震の中では、人は何もできない
2].地震の心得2
  すばやく被災状況を把握することで、被害を最小限に食い止めることができる
3]. 地震の心得3
  日本列島では、直下型地震はいつでも、どこでも発生する
4]. 巨大地震がもたらす被害を最小限におさえるために何をすべきか--竹内均
  望まれる早期災害把握システム
  家屋の補強に教訓を生かせ
  身を守る事前のそなえ
  東京の地震対策は最重要課題



 でも、東京壊滅の次には「東京復興」という希望がある。
 捨てたものではない。
 余分なものが滅び、新しいものが芽吹いていく。

 復興への力強さが人を鍛えてくれる。
 明日の日本を支えるのが、責任なすりあいのパパママ文化ではいかにも心もとない。
 復興は仮面をかぶってやれるほど甘くはない。

 それが明日への希望に灯をともしてくれる。
 「明日へという」復興が。


 なを現在時点で、桜島は噴火警戒レベル:3、浅間山はレベル:2である。

★ 気象庁 | 噴火警戒レベルとは
http://www.seisvol.kishou.go.jp/tokyo/STOCK/kaisetsu/level_toha/level_toha.htm




<つづく>



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